能登で右往左往 (2010/05/01〜05)


【自転車】AM-GT
【走行距離】5日間で386km



今年の黄金週間は5連休が取れたので、思い立って能登半島のツーリングに行ってみました。
島だの半島だのを走るときは「海岸線を時計回りに」が定説のようですが、そこは臍曲がりのやること、西の海岸から東の海岸に横断してみたり、尾根道を走ってみたりと、海っぺりだけでなく山村の風情も楽しみながら走ります。


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  大きな写真は全て1024×768ピクセル、それぞれ70〜280kbほどあります。ご了承下さい。


【1日目】

【走行距離】54km
【ルート】JR北陸本線 石動駅 → 倶利伽羅峠 → 倶利伽羅駅 → 津幡市街 → 大崎海浜公園キャンプ場


JR北陸本線の石動(いするぎ)駅に降り立ったのが正午頃。
ここから倶利伽羅峠に向けて走り出します。

八重桜 倶利伽羅峠に向かう道には「八重桜まつり」という幟が立てられています。
そんなに言うほどたくさん木があるわけではないけど、もしかしたら車道ではなくて隣の歩き道にはたくさん植えられているのかもしれません。
いずれにせよ、ちょうど見頃でなかなか美しいです。

この倶利伽羅峠、源平の戦いの舞台となった有名な峠です。
峠の辺りは公園というか緑地のようになっていて、よく手入れされた芝生、ベンチ、記念写真用のパネル(穴から顔だけを出すやつね)といったものが目に付きます。
観光客がぞろぞろと歩いていて、峠に着いたらゆっくり座って一休みしようという私のもくろみは崩れました。

南方向に向かって見晴らしの良い場所があるのですが、そこにはボタンつきスピーカーが設置されており、ボタンを押すと、雅やかなBGMに乗せた荘重な口調で、由緒正しき倶利伽羅峠の説明が流れます。
たぶんそうだと思います。まじめに聞いていなかったので正確なところ何の説明だったのかはわかりません(笑)。

峠に立っている立派な倶利伽羅不動寺は、これまたどこからか姿の見えぬスピーカーから静謐な音楽が流れ、併せて高級線香のような香りも立ち込め、「ありがた感」満載です。

倶利伽羅峠の向こう側 峠を越えて下り始めると、いままでの喧騒が嘘のように静かな道に戻ります。
眼下には麓の集落や道路が見えます。峠からも展望はあるのですが、あれだけ観光客が多いとのんびりと眺めてなんかいられないからね。

倶利伽羅駅 倶利伽羅駅 下り坂をぐーっと降りてくると倶利伽羅駅に到着。
峠のごちゃごちゃが嘘のような静けさです。一本だけある八重桜が満開で、この静かな駅に控えめながらも華やぎを与えてくれています。

麦畑 駅から海方面へはほとんど平ら。
途中、広くて平らな土地に青々と草が生えていて、放棄されて雑草が生え放題な田んぼなのかと思ったら、麦畑でした。
刈入の時期にはさぞかし美しいでしょう。また秋に来なければ。って、一日目にして早くも宿題を抱え込んでしまった。

夕日 夕日 初日の夜は、海のすぐそばにある大崎海浜公園のキャンプ場にて就寝。



【2日目】

【走行距離】87km
【ルート】大崎海浜公園キャンプ場 → 能登海浜自転車道 → なぎさドライブウェイ(の入口) → 羽咋広域農道 → 志乎・桜の里古墳公園 → 県道300号線 → 国道415号線 → 道の駅氷見 → 国道160号線 → 県道70号線 → 県道306号線 → 林道石動山線 → 石動山テント村

ごそごそと起き出して、能登有料道路沿いの自転車道を北へ。
途中、有名ななぎさドライブウェイの入口があったので覗いてみるも、車・車・人・車・人・人の状態を見ただけで突入する気力をなくし、逃げ去ります。

広域農道 半島の東岸へ行くべく細い道を走っていたら、いつの間にかすごく立派な道路に紛れ込んでしまいました。
完成間近の広域農道で、この6月末に全線開通だそうです。
今のところは、所々で狭くて未舗装の旧道に迂回しなければならないため、交通量は激少。10kmほど走ってすれ違った車は数台でした。

さくら 途中で見かけた満開の桜。たぶんソメイヨシノではなく、山桜かな?

そんなこんなで氷見市街に到着。
市内には道の駅があって、海産物の店だの海鮮料理の店だのがあるのですが、

人人人人人人人人人人

の状態を目の当たりにした私はトイレのみを使ってとっとと逃げ出したのでした。

氷見の海 氷見の海はとっても綺麗だったんですけどね。

長坂の棚田 海沿いの国道(交通量が多くてかなり嫌な道)に別れを告げて内陸へ。
きつい坂をひいこら言いながら登っていくと「→長坂の棚田」と書かれた看板が。
案内にしたがって脇道に入り、さらにひいこらと登っていくと、やがて棚田が姿を現します。

長坂の棚田 長坂の棚田 この田んぼを切り開いた先人の苦労をしのびつつ、しばし休憩。
(息が上がっていて嫌でも休憩せざるを得なかった)

向こうに見えるのは富山湾。運が良ければ、そのさらに向こうに立山連峰が見えるんだそうです。今日は霞んでいてだめですね。


実際に棚田を見るともっと見事です。
棚田全体を写真に収められるような撮影スポットを見つけられなかった…。

長坂の棚田 いったん棚田から道を降りて、元の道路との分岐点まで戻り、元の道路(またもや登り坂)を走って、棚田を向かい側から見る、の図。

さらにまたきつい坂を登り(途中でたまりかねて押しが入った)石動山(せきどうざん)に到着。
すでに夕方になっていたので付近の散策は明日に回すことにして、本日は石動山テント村にて就寝。



【3日目】

【走行距離】112km
【ルート】石動山テント村 → 林道城石線 → 七尾駅 (→ 能登鉄道に乗って穴水駅まで) → 珠洲道路(県道303、26、57号線) → 県道6号線 → 宇出津市街 → 県道35号線 → 姫集落 → 小木集落 → 恋路浜 → 国道249号線 → 珠洲市街 → 鉢ヶ崎公園キャンプ場

能登半島にはそれほど高い山はなく、最も高くて標高600m台。ここ石動山の山頂は564mのようです。
それでも山奥のキャンプ場の朝はとても静かで、すがすがしい気分で起き出しました。

石動山のうんちく 今日はまず石動山の宗教施設を見て回ることにします。
いまでこそ「せきどうざん」と読みますが、かつては北陸本線の駅名と同じく「いするぎやま」だったようです。
千年ほどの歴史があるようです。

お寺の跡地 戦国時代の戦火や明治時代の廃仏毀釈運動によって仏教施設はほとんど破壊されています。「○○院跡」といった標柱や看板があちこちに立っています。
残っている最も古い建物でも江戸時代あたりのものです。

伊須流岐比古神社 伊須流岐比古神社。
こちらも建物は江戸時代に建てられたものです。

五重塔跡地 手前はかつての修行僧のお墓でしょうか?
あちこちに説明の看板が立っているのですが、このお墓には何も説明がありませんでした。
奥の方に見えている正方形は、かつてここに建っていた五重塔の土台だそうです。

しだれ桜 山を下りて七尾駅に向かいます。
途中、しだれ桜が満開でした。

市街地を見下ろす 今日も暑くなりそう…。

初めの二日間でのんびりしすぎて、このままでは半島の先っちょまで行けないことに気づいてしまいました。
そこでまっすぐに突端を目指し、そこからゆっくりと付け根に戻ってくることにしました。
まず七尾駅から能登鉄道で穴水駅まで輪行し、そこから珠洲道路を使ってなるべく早く珠洲市に行こうと思います。

珠洲道路 手持ちのツーリングマップルによると珠洲道路は「快走幅広2車線道路」だそうです。
高めの場所を走ります。

走ってみての感想は「荒涼」。
自転車的には幅広でまっすぐな道路は全く面白味に欠けます。
周りが森でなく草原が多いのも荒涼とした感じを増加させます。でも草原が多いとヒバリが巣を作るので、意外と賑やかなんだけど。

宇出津 そのまま珠洲まで行かず、宇出津(うしつ)に寄り道。

宇出津 宇出津港に向かって細い路地がいくつも走っています。
歴史を感じさせます。

海岸沿いを東へ 宇出津で昼食を食べた後は、半島の突端である珠洲市を目指します。
それにしても初日からずっと日差しが強い!

千畳敷 小浦の「千畳敷」と呼ばれる場所。
平たい岩が海底に敷き詰められたようになっていて、水深が浅いです。
干潮時にはこの岩が海面よりも高くなるようです。
ネットで調べたら「能登半島で最も美しい夕日が見られる」とのことでした。

小木のとも旗祭り 小木のとも旗祭り 「姫」という可愛らしい名の集落(でも坂はきつかった)を抜けて、小木の集落を通りかかったら、交通規制をしていたり人がたくさん歩いていたりで何やらえらく賑やかです。
警備員さんに聞いたら「とも旗祭り」というのをやっているということなので、覗いてみました。

大きな船が幾艘もの小さい船を曳いていて、しかもそれぞれが幟を立てているので、とても賑々しい雰囲気でした。

小木駅跡 いつまでも祭りを見物していては日が暮れるまでに珠洲に着かないので走り出します。

能登鉄道は廃線になった区間が多く(それを補うようにバスが走っています)あちこちで廃線跡や駅の跡を見かけます。
これは小木駅跡。猫が一匹、暇そうにしていました。

五色ヶ浜 五色ヶ浜 「五色ヶ浜」という名のバス停を見つけたので「また陳腐な名前を付けやがって…」と思ったら、例えようもなく美しい海の色!
まさに名に恥じぬ色です。
ごめんなさい、前言撤回します。

もちっと良いアングルから写真を撮れれば良かったんですが…

船のガレージ 船専用ガレージ。
こういうのを見ると船が生活を支えているんだなぁと実感します。
かつて水俣を旅行したときにこういうのを見かけたんですが、能登にもあるんですね。

海っぺりの田 珠洲市に入る頃には日が暮れかけていました。
海っぺりに作られた田圃を発見。塩水が入り込まないのか、ひとごとながら気になります。

この日は半島突端に近い鉢ヶ崎公園キャンプ場にて就寝。



【4日目】

【走行距離】84km
【ルート】鉢ヶ崎公園キャンプ場 → 県道28号線 → 県道272号線 → 上黒丸 → 県道40号線 → 国道249号線 → 白米の千枚田 → 輪島市街 → 袖ヶ浜キャンプ場

まずは半島の突端を北へ。

旧道へ 県道28号線を走りますが、所々で斜め方向へ分岐する細い道があります。
これはおそらく旧道でしょう。このような道は家が密集していて幅を広げることができないので、海岸沿いにより広くてまっすぐな道路を新しく造ったのでしょうね。

旧道 旧道 このような道を見つけたら、迷わず旧道に入りましょう。
広くてまっすぐな道は、自転車で走ってもひとつも面白くありません。家々はみなこちらにケツを向けているし。
旧道の方が生活感が漂っていて、のんびり走るには何倍も楽しいです。

須須神社 須須神社 須須神社を見物。日本海側一帯の守護神だそうです。
社叢は国の天然記念物に指定されています。

旧道 引き続き生活感の漂う旧道。
海に近いところを走っていると、雰囲気としては南房総に似ているなぁという感じを受けます。
個人的な印象としては、時間の流れの緩やかさでは紙一重で房総の方が上かな。

八重桜 ここでも八重桜が満開。

原発反対 細かいアップダウンが多いので、海を見下ろせる景色の良い場所が多いです。
「原発反対」の文字に、地方が抱える傷跡を見る思いがします。

海を見下ろす 海を見下ろす 坂を登り切ったところで海の眺めが開けると、ハッとしますね。

木ノ浦の海岸にある「二三味(にざみ)珈琲」に立ち寄りました。
コーヒーを飲めるかな、と思っていたのですが、ここは豆の販売のみだそう。
せっかくなので豆を買って帰ることにします。後日、家で淹れて飲んでみたら、香り高くてとても美味しいコーヒーでした。

店から県道に戻る激坂は地獄でしたが。

海の色 強風 今日も海の色が美しいです。
しかし風が非常に強く、たまに身の危険を感じることもあります。

雄大な眺め 雄大な眺め 同じ道を、坂の上と下から。
繰り返し「自転車的には面白くない」と書いてはいますが、やはり絵的には素晴らしいものがありますね。

大谷川の鯉のぼり 大谷川では鯉のぼりフェスティバルが行われていました。
屋台も多く出ていて賑やかです。

棚田と風車 棚田 ここで海沿いの道とは一旦おさらばして、大谷川を遡る県道272号線に入ります。
走り出すやいなや景色は海沿いの漁師町から山村風景に早変わり。

ここの棚田もなかなか見事でした。

しかしこの道はかなりきつい坂。しかも工事のため迂回しなければならず、それがさらに脚に来ます。
途中、少し押しが入りました。

山桜 途中で出会った山桜。

新緑の山 県道40号線に入ります。

新緑に染まる山。
きっと秋には山全体が燃えるような色になるのでしょう。
ここにもまた、秋に再訪すべき宿題が…

県道272号線と40号線は、車が少なく、とても静かで、「美しい里山」のイメージそのもののような楽しい道でした。
交通の不便な場所ですが、また走りに行きたい道です。

坂を下り、再び海沿いの道に合流します。

白米の千枚田 白米の千枚田 ここはかなり有名な観光スポットです。白米(しろよね)の千枚田。
観光客がうじゃうじゃいます。もう午後も遅い時間なのでこれでもかなり少なくなっているのでしょう。昼過ぎだともっとひどいのではないでしょうか。
近くで見てみるとやはり素晴らしい眺めです。
連綿と受け継がれてきた人々の努力を思わずにはいられません。

ここには駐車スペースがあるのですが、狭いので台数は限られています。
交通整理をしていたのはおそらく地元のボランティアの方々。
大変な仕事だろうと思いました。

輪島港のにっぽん丸 輪島市街に着いたのは夕暮れ時。
輪島港では新しく大型客船が接岸できる岸壁ができたそうで、私が着いたときには初めての大型客船である「にっぽん丸」が出港するところでした。
大勢の見物人が見ていました。

この夜は市街地からほど近い袖ヶ浦のキャンプ場にて就寝。



【5日目】

【走行距離】49km
【ルート】袖ヶ浜キャンプ場 → 県道38号線 → 県道7号線 → 穴水駅

県道38号線 いよいよ連休最終日。
県道38号線を西へ向かいます。

県道38号線 高所恐怖症の人は見ちゃイカン。

分かれ道 本線は右。
左の道は山腹を緩やかに登っていきます。

ツーリング、とくに長距離のツーリングだと、行程をこなすために寄り道を断念することが多くなります。
あの道を走っていたら、きっと楽しかったんだろうな…。
家から遠い地だと再訪が難しいので、余計にそう思うんでしょうね。

分かれ道 朝のうちは気温が低く、海のそばまで降りてくると霧が濃いです。
生活の厳しさを感じさせる眺めです。

間垣の里 間垣の里 上大沢町のあたりは、潮風から家々を守るために、竹で作った間垣が続いています。
やはり自然が厳しいんでしょうね。

水を見守る 道は海を離れて山奥へと入っていきます。

道端に小さな沢がありました。
飲み水として使われているのでしょうか、そばに小さなお地蔵様?が鎮座ましましています。
苔の具合から見て、かなり古そうです。

西二又 私が今まで見てきた中でも一、二を争う美しい集落、西二又。
特に何があるというわけでもないけど、立ち去りがたい場所でした。

西二又
※この写真の拡大画像のみ、1600×772ピクセル、281kbです。


のと鉄道 穴水駅には昼前に到着。
駅前の寿司屋で海鮮丼を食べて(高いけど美味しかったので満足)、能登鉄道・JR七尾線・JR北陸本線・JR信越線を乗り継いで帰宅。



今回の旅の総括

・有名な観光地は避けるべし。
倶利伽羅峠やなぎさドライブウェイは私的には「行きたくない場所」でした。
白米の千枚田は例外かな。それでも人が多い時間帯に行くとやはり嫌な気分になるかも。
・海からちょっと入るだけで農村地帯の雰囲気。
このへんは房総や三陸と似ているようでちょっと違う。言葉では説明しづらいけど。
・実は海沿いにこだわらない方が楽しい。
海沿いは観光地化が進んでいますが山の中はそうでもありません。
海沿いの道でも適度に風景の変化があるのでわりと飽きないのですが(←私は結構飽きた)、里山の静かな風情を見ずに過ぎてしまうのはあまりにも勿体ないです。
・美味しい店を探すのが意外と難しい。
これは単に運が悪かっただけかもしれませんが…。
もっと安くて魚の美味しい店がゴロゴロあるかと思っていたのですが、なかなか巡り会えませんでした。
やたらと観光地化が進んでいる地域と、お店の全くない過疎化地域の差が極端な感じです。
今回はテント旅だったのですが、能登を旅するなら民宿などに泊まった方が、美味しい魚料理にありつけるかもしれません。



それにしても今回は楽しい旅だったな。



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